狂気生誕

息を止めろ。
ずっとは無理。
でもそれが絶対なら、不可能を可能にするために、命令にない行動をするしかない。
そしてあの恐ろしいものが産声をあげる。
実行不可能な命令という子宮で、狂気は生まれる。

これを徹底的にパロディー化している映画がある。
テリー・ギリアム監督、ジョニー・デップ主演、「ラスベガスをやっつけろ」
タイトルからして分かりやすい。そんなこと、無理なのだ!

作品への一般的な評価もまた分かりやすく「狂ってる」。
一方で「ぜんぜん分からない」というのも良く聞く。

60年代に前後して巻き起こった、ニューエイジ、ヒッピー文化。
その一方はフリーセックス、ドラッグへと流れ、一方はアーサーCクラークのSF作品「幼年期の終わり」のような、トランスヒューマニズムの源泉を生み出していった。

これらは消滅しないどころか、姿形を変え延命し、増幅さえしている。
ビートルズはこれを愛と呼び、「All need is LOVE」 と歌ったのだ。
それは自由で美しい人生という理想だ。

しかしジョニーデップ ( ラウル・デューク ) は感傷的に言う。
「あのキラキラと輝く美しい波は、ぼくらの眼の前まで来て、崩れ去ってしまった」この時以外は、本当にどうしようもなくお馬鹿なヤツを演じきっているのに。
ヒッピーという狂気の源泉を、分かりやすく、パロディーで描いた作品。
その狂気は「自由で美しい人生」という不可能の周辺で生まれた。

これは重要な啓示だ。
実行不可能な命令には狂気が宿る。

そして狂気は時として最高のコメディーになる。
森友問題、加計問題…まぁね。